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福岡地方裁判所 昭和52年(わ)150号 判決 1977年12月09日

本籍

北九州市小倉北区魚町三丁目二三九番地

住居

同市同区井堀一丁目一一番七号

会社役員、旅館経営

末吉和喜

昭和一一年五月二二日生

本店の所在地

北九州市小倉北区片野三丁目四番二四号

山内第二マンション二階

法人の名称

株式会社山内興産

代表者の氏名

末吉和喜

右末吉和喜に対する所得税法違反、法人税法違反、株式会社山内興産に対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は検察官浅井敞出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人末吉和喜を懲役一年及び罰金四〇〇万円に、被告会社株式会社山内興産を罰金一、五〇〇万円に処する。

被告人末吉和喜において右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人末吉和喜に対しこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社株式会社山内興産は、北九州市小倉北区片野三丁目四番二四号山内第二マンション二階に本店を置き不動産取引業等を営むものであり、被告人末吉和喜は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統轄するとともに、個人として同市同区大字吉志字杉谷三七六番地所在の旅館「カーテル松ケ江」等を経営しているものであるが、

第一  被告人末吉和喜は、自己の所得税を免れようと企て、

一  昭和四八年分の総所得金額は一、八三七万八、九二八円でこれに対する所得税額(源泉徴収税額一五三万九、七五五円を控除した額)は五六二万六、一〇〇円であるのに、前記旅館営業の公表経理上収入を除外する等の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四九年三月一四日同市同区萩崎町一番一〇号所在の小倉税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は四四一万一、四四五円でこれに対する所得税額は同年中の源泉徴収税額を控除して一〇〇万一、三三五円の還付となる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税六六二万七、四〇〇円を免れ、

二  昭和四九年分の総所得金額は三、〇七二万七、四五〇円で、これに対する所得税額(源泉徴収税額二一一万八、一六八円を控除した額)は一、〇六二万三、四〇〇円であるのに、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五〇年三月一三日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は八九五万一、一〇五円で、これに対する所得税額は同年中の源泉徴収税額を控除して六九万五、〇六八円の還付となる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一、一三一万八、四〇〇円を免れ、

第二  被告人末吉和喜は、被告会社の業務に関しその法人税を免れようと企て、

一  昭和四八年四月一日から翌四九年三月三一日までの事業年度において、所得金額が一億二、三三七万二、三八〇円でこれに対する法人税額が五、一六八万二、五〇〇円であるのに、公表経理上売上等を除外し、宅地の造成費等を架空計上するなどの行為により、所得の一部を秘匿したうえ、昭和四九年五月三一日前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、四六六万六、九四七円で、これに対する法人税額が一、〇六五万四、七〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税四、一〇二万七、八〇〇円を免れ、

二  昭和四九年四月一日から翌五〇年三月三一日までの事業年度において、所得金額が八、五九五万四〇二円で、これに対する法人税額が三、五三七万四、二〇〇円であるのに、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五〇年五月三一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、五一八万四、八三七円で、これに対する法人税額が一、一二一万七、三〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税二、四一五万六、九〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人末吉和喜の当公判廷における供述

一、被告人末吉和喜の検察官(昭和五二年二月一七日付)及び大蔵事務官(同五〇年六月二八日付)に対する各供述調書

一、泉川佳子(二通)及び黒田敏子(昭和五二年二月二六日付)の検察官に対する各供述調書

一、疋田修(昭和五〇年七月一五日付)、武本哲朗(同月一一日付)、上村勲(同月一一日付、同月二五日付)佐藤順一(同年六月二五日付)、梅本公久(同月二七日付)、都留公博及び児玉順之助の大蔵事務官に対する各供述調書

一、検察事務官作成の電話聴取書

一、飯尾克己及び別府正之(昭和五一年六月一〇日付)作成の各確認書

一、佐藤順一作成の上申書

一、押収してある定期預金メモ一綴(昭和五二年押第二一九号の一八)及び預金メモ一綴(同号の二〇)

判示冒頭の事実につき

一、商業登記簿謄本

判示第一及び第二の一の事実につき

一、奥萬治の検察官及び大蔵事務官(二通)に対する各供述調書

判示第一の全事実につき

一、被告人末吉和喜の検察官(昭和五二年二月二五日付、同年三月七日付)及び大蔵事務官藤田俊弘(同五一年二月五日付、同年七月二二日付、同月二四日付同年一二月二二日付)に対する各供述調書

一、己斐タマヨ、黒田敏子(昭和五一年一月二三日付)、恒末信子、佐藤順一、梅本公久、浜崎昇及び上村勲の検察官に対する各供述調書

一、泉川佳子(昭和五〇年六月二七日付検甲四八号のもの、同五一年一月一四日付、同年六月九日付、同年一一月九日付)、黒田敏子(同年一月二三日付検甲五四号のもの、同年五月二一日付検甲五五号のもの、同年一一月一〇日付)、上村勲(同年三月二日付)、佐藤順一(同年二月二日付、同年六月二三日付)、梅本公久(同年一月二八日付)及び間島幸子の大蔵事務官に対する各供述調書

一、築瀬一郎、佐渡島匡男他一名、西原次郎、古賀一夫(二通)、岩野眞勝及び堀川繁次作成の各上申書

一、大蔵事務官作成の昭和五一年一二月二四日付、五二年一月一七日付、同年二月四日付及び同月二六日付各査察官調査書

一、別府正之作成の昭和五〇年六月二七日付確認書

一、飯尾克己、井関正義(検甲四一号及び同九九号のもの)、別府正之(同四三号及び同一〇〇号のもの)及び福岡相互銀行三萩野支店作成の各調書

一、宮永繁作成の「取引内容照会に対する回答」及び「取引内容照会に対する回答書の記載事項について」と題する各書面

一、検察事務官作成の捜査報告書

一、押収してある決算書及び申告書綴一綴(昭和五二年押第二一九号の五)及びメモ書一綴(同号の一三)

判示第一の一及び判示第二の二の各事実につき

一、北原琢三作成の「取引内容について」と題する書面

判示第一の一の事実につき

一、大蔵事務官作成の昭和五一年一二月一四日付査察官調査書

一、押収してある昭和四八年分確定申告書一綴(昭和五二年押第二一九号の三)、金銭出納帳一冊(同号の七)及び元帳一冊(同号の一〇)

判示第一の二及び第二の二の各事実につき

一、近藤多津子及び吉田喜代美の検察官に対する各供述調書

一、遠藤定信の大蔵事務官に対する供述調書

一、遠藤定信作成の「取引内容について」と題する書面

判示第一の二の事実につき

一、大蔵事務官作成の昭和五一年一二月一五日付査察官調査書

一、国丸健次作成の証明書

一、押収してある昭和四九年度確定申告書一綴(昭和五二年押第二一九号の四)、金銭出納帳一冊(同号の八)元帳一冊(同号の一一)及び四九年決算関係書類一綴(同号の一二)

判示第二の全事実につき

一、被告人末吉和喜の検察官(昭和五二年二月二一日付、同年三月八日付、同月一〇日付、同月一一日付、同月二二日付、同年四月二五日付)及び大蔵事務官樋口昭三(同五〇年六月二四日付、同五一年七月二二日付、同月二四日付、同年八月一七日付、同年一二月二二日付、同五二年一月一九日付)に対する各供述調書

一、末吉藤三郎、高畑秀雄(二通)、三宅重幸、今西幹郷(二通)、木村清美(三通)及び孫天一(三通)の検察官に対する各供述調書

一、田尾升、泉川佳子(昭和五〇年六月二七日付検乙六九号のもの、同月二八日付、同五一年一月一三日付、同年六月一〇日付)、黒田敏子(昭和五一年一月二三日付検乙七五号のもの、同年五月二一日付検乙七六号のもの)、高畑秀雄(二通)、三宅重幸(二通)、今西幹郷(三通)、相沢清二、森田国男、木村清美(三通)、山脇敏彦、梅田義男、賀屋国昭、大西祥弘、西弘敏、松本幸生、本川浄(二通)、原敏幸及び笠石佳臣の大蔵事務官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の昭和五一年七月二一日付、同年八月四日付、同年一二月二五日付、同五二年一月一六日付、同年二月二五日付、同年三月二五日付、同月二八日付及び同月二九日付各査察官調査書

一、別府正之(検乙一九〇号、同一九二号、同一九八号、同一九九号のもの)、王堂勝明(三通)、井関正義(検乙一九六号、同一九七号のもの)、井石政義(二通)及び原敏幸(昭和五〇年七月二四日付、昭和五一年一〇月九日付)作成の各証明書

一、黒田敏子、森田国男、大田黒博及び梅田義男作成の各上申書

一、押収してある契約書(買入)一綴(昭和五二年押第二一九号の三三)、売買契約書一綴(同号の四〇)、工事請負契約書一綴(同号の三六)、給料支払明細書一綴(同号の三二)、見積書四綴(同号の三八)、各月給与手取額一綴(同号の四六)及び大学ノート一冊(同号の四七)

判示第二の一の事実につき

一、角谷繁利、山形利晴、山下美好、馬場洋佑、中島高治(二通)、平松伸雄及び有松海生の検察官に対する各供述調書

一、宮武理喜、角谷繁利(三通)、片山勝善、山形広樹、森田宏、中島高治(六通)、中島麗子、松田慶三、松本忠雄、早見一宇、平松伸雄及び鳥井田二三雄の大蔵事務官に対する各供述調書

一、秋吉克章、田中富太、田中朗、木下尹、前田三男及び古賀一郎作成の各上申書

一、杉本和美作成の「取引内容に対する回答」と題する書面

一、山本謹二及び中森男作成の各「取引内容照会に対する回答」と題する書面

一、横沼金次作成の「不動産売却の照会に対する回答」と題する書面

一、大蔵事務官作成の写真撮影てん末書(検乙一三九号のもの)、調査事績報告書、査察官調査報告書(昭和五〇年一〇月四日付)、査察官報告書(昭和五一年八月一二日付)、査察官調査書(昭和五二年一月三一日付、同年三月三一日付)及び実況見分調書

一、押収してある法人税の確定申告書一綴(昭和五二年押第二一九号の二三)、元帳一冊(同号の二七)、給料支払明細書一綴(同号の三一)、売買契約書一綴(同号の三四)、整理伝票(第八期分)一綴(同号の三九)及び給料支払額メモ一綴(同号の四四)

判示第二の二の事実につき

一、宮永繁、吉田喜代美、相良博之、松山末次及び河野孝志の検察官に対する各供述調書

一、吉田喜代美(三通)、近藤多津子、益永昭弘、別府正之(検乙二一九号のもの)、福田信行及び相原博之の大蔵事務官に対する各供述調書

一、木戸一一郎、市原惇、三浦晴郎、野口光法、棚町虎太、中本博雄、福山政則、橋本潔、浜砂恒幸、藤木アサノ、山本宣彦、山下義清他一名、古川晴孝、高尾勝美、木下憲治作成の各上申書

一、原敏幸、山本宣彦(二通)作成の各証明書

一、宮永繁、中原康治、河野孝志、鈴木健及び横井正寛作成の各確認書

一、秋枝一男及び山浦和敏作成の各「取引内容照会に対する回答」と題する書面

一、紫牟田薛作成の「横沼農道舗装工事について」と題する書面

一、大蔵事務官作成の写真撮影に関する上申書、査察官調査書(昭和五二年一月二二日付、同年四月五日付)、調査報告書(昭和五一年六月一一日付)、査察官報告書(昭和五一年六月三〇日付 同年一一月二二日付)及び写真撮影てん末書(検乙一七八号、一八〇号、一八一号、一八四号のもの)

一、押収してある法人税確定申告書一綴(昭和五二年押第二一九号の二四)、元帳一冊(同号の二八)、現金出納帳一冊(同号の二九)、売買契約書(仲介)一綴(同号の三五)、金銭出納帳一冊(同号の一九)、給料支払明細書二綴(同号の三七、四二)、売買契約書一綴(同号の四一)、報告書一綴(同号の四三)、給料支払額メモ一綴(同号の四五)、誓約書二通(同号の四八、五〇)及び支払代金清算書一枚(同号の四九)

(法令の適用)

被告人末吉和喜の判示第一の一、二の所為は、それぞれ所得税法二三八条一項に、判示第二の一、二の所為は、それぞれ法人税法一五九条一項に該当するので、判示第一の各罪につきいずれも懲役刑と罰金刑を併科し、判示第二の各罪につきいずれも懲役刑を選択することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で同被告人を懲役一年及び罰金四〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとし、被告会社については、その代表者である被告人末吉和喜が同会社の業務に関して判示第二の一、二の各所為をなしたものであるから、法人税法一六四条一項、一五九条に該当するところ、右は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により判示第二の一、二の各罪所定の罰金額(情状によりいずれもその免れた法人税の額に相当する額)を合算しその金額の範囲内で被告会社を罰金一、五〇〇万円に処することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 前田一昭 裁判官 浦上文男 裁判官 長谷川憲一)

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